「バタバタッ」「がたん」「ドン!」
また上の人が走り回っている! モノを落とした! 乱暴にドアを閉めた!
アパートやマンションに住んでいると、日々気になるのは他人が出す音。
疲れて帰ってきた時、いつもの耳障りな音が聞こえるとつい文句のひとつも言いたくなりますよね。
こんにちは!
住まいと暮らしのコンサルタント くらリノ です。
集合住宅はもちろんのこと、一軒家だってご近所トラブルの多くは「音」によるもの!
ここで問題となるのは、工事などの大きな騒音のことではなくて、他人が発する生活でのごくあたり前の音・・・つまり、生活音なのです。
いちどうるさく感じたら無性に気になって、どんどんそれがストレスになり気が滅入る、イライラする、腹が立つ!
だけど、ちょっと待って下さい!!
迷惑なその生活騒音、あなたも同じように出していませんか?
もしかしてあなたも、誰かのイライラの原因になっているかもしれませんよ。
そこで今回は、 “引っ越ししたくなる”1番の原因である「生活騒音」についてみていきます。
音の正体と対処法、そして、自分が騒音の発生源にならないために気をつけたいこともお話ししますね。
目次
生活騒音、それが隣人とのトラブルの大きな原因となる
国土交通省から公表された「平成30年度マンション総合調査」によれば、「生活音」は「居住者間の行為、マナーをめぐるトラブル」の第1位になっています。
生活音がトラブルの原因になり、問題となるのはなぜでしょうか?
生活音は、感情や人間関係が影響するデリケートで厄介な音
建設作業の騒音や振動、楽器やカラオケ、あるいは街頭の商業宣伝放送などによる「音量での公害」に対して、生活音はたとえ小さな音であってもうるさく感じる「感情による公害」なのです。
それは
自分が騒音元であることに気付いていない
騒音の加害者側は、迷惑をかけている意識がないため音を発生しがちだが、被害者側は迷惑と捉え、我慢できずに怒りへと発展してしまいます。
感じ方、気にする度合いには個人差がある
これくらい平気とか、気にするほどではないと自分では思っていても、他の人にとっては許容できないレベルかもしれません。
自分の常識は、他人には非常識になることも…。
年齢やライフスタイルでの違い
住人の年代や生活環境がみんな違うので、早朝、深夜、休日などの生活時間が変わり、そのために生活音の発生条件も変わってきます。
環境による許容範囲の違いは大きいですね。
このため、生活音は「心理的に不快な音」で、煩音(はんおん=わずらわしい音)とも言われています。
「煩音」は人間関係がキーポイントである
煩音の名付け親である、騒音問題総合研究所 代表の橋本典久氏によると、
「煩音とは、騒音とは異なり音量はそれほど大きくなくても、聞く人の心理状態や人間関係などの要因によって煩わしく感じられる音」だそうです。
上の階から聞こえる子どものパタパタ足音。
普段は「しかたがない」と大目に見ることができても、疲れていたりイライラしている状態のときには、子どもばかりか親にさえ腹が立ってしまいがち。
反対に、自分も同じような歳の子どもがいたり、その階の住人と普段から付き合いがあって、子どもの名前も顔も知っているなどの状況であれば、同じような足音でも耳障りに感じる度合いは減ってきます。
このように、生活音は心理状態や人間関係次第でうるさいと感じてしまうため、トラブルの一番の原因となるのです。
ふつうに発生する音、これって気になるの?
次のようなあたりまえの音、他人から受けたなら、誰しもイラッときた経験ありますよね。
- 「バタバタ」足音 ふつうに歩いていても、下の階の人には走っているように聞こえたりと、トラブルの元になりやすい
- 「カーン」物が落ちる音 スプーンなどの食器類、浴室での洗面器やシャワーヘッドの落下音
- 「バタン」ドアの開閉音 金属製の玄関ドアだけでなく、木製ドアのきしむ音、窓や引き戸のガラガラッという音
- 「ギー」いすをひく音 引きずったような音、擦れたような音
- 「ガタガタ」洗濯機の音 とくに脱水のとき、高速回転で洗濯機自体が揺れることもあり大きな振動になる
ほかにも、壁の中を通る水道配管やトイレの水流音もあります。
音の大きさより気になるのは、時間帯。
日中の洗濯機や掃除機の音はさほど気にならなくても、就寝中の夜中だったら・・・
早朝、鳴り響く他人の目覚まし時計の音で目が覚めてしまったら・・・
生活リズムが違うからこそ、ささいな生活音も気になりやすいです。
気になるその音、どうして聞こえてくるの?
自分を悩ますこの音は、一体どこから聞こえてくるのでしょうか?
実は発生場所、はっきりと特定できない事も多いのです。
真上から聞こえてくると思っていても、実は斜め上からだった!上からではなくて下の階からの音だった! ということも。
なぜかというと、音には「聞こえやすい音」と「聞こえにくい音」があり、伝わり方も違うからです。
音の性質で伝わり方も違います
音には発生のしかたで2つの種類があります。
落下音や走る音など、床や壁を振動させて伝わる音
固体音は振動によって音がつくり出されるので、壁や床がスピーカーの役割になり、振動が大きいほど「聞こえやすい音」になります。
壁や床を厚くしても糸電話のように音が伝わることもあり、上の部屋から発生した床への固体音が、真下だけでなく斜め下の部屋にも音が伝わるなど、音の発生を予防するのは困難です。
人の声やテレビの音など、空気が振動して伝わる音
ペットの鳴き声やエアコンの室外機の音、室外からの騒音も空気音です。
空気音は固体音より「聞こえにくい音」で、防音対策も空気の遮断(隙間対策)や吸音材を付加するなど、建物のつくりの工夫で低減できます。
同じ掃除機の音でも夜のほうがうるさく聞こえるのは、まわりが静かで自分の家の「雑音」が小さいために、他人の出す音が目立つから。
聞こえやすさには、まわりの状況も関係します。
自分が「煩音」を出さないための、5つの気配り
生活音が問題なのは、何も被害を受けたときだけではなく、反対に自分が人に迷惑をかける可能性もあるということです。
自分が出す音が他の人の「煩音」にならないよう、可能な限り対策をして予防しましょう。
防音には、遮音「外から室内へ侵入する音を防ぐ、音の伝わる経路を遮る」と 吸音「音を吸収する効果の高い材料を貼って、発生源に近いところで減衰」があり、簡単にできる方法として次のようなことがあげられます。
床材の上に厚手のカーペットやラグを敷くことは、足音に有効
また、子どもの遊ぶスペースにクッション性の高い防音マットや防音カーペットを敷くと、子どもが出す音への、親の心配も軽減できますね。
大きな音を出すものは、壁や床に振動を伝えないようにする
- 洗濯機には防振ゴムを使用する
- 目覚まし時計や携帯電話など、振動するものは床に直置きしない
- 椅子の靴下(脚にゴムをつけるなど)は、振動が小さくなる効果あり
- 同様に、家具や電化製品の底に、フェルトを貼る
扉や窓が跳ね返るような乱暴な開け閉めはやめる
- 扉に隙間テープのようなクッションを貼って、音の発生を少なくする
- 防音カーテンにする
模様替えのときには、お隣との壁側に家具を設置してみる
厚みがある本棚やタンスなら音を隔ててくれるので、隣から受ける音にも隣へ出す音にも効果あり
話し声やテレビの音など「空気音」に効果があるのは、天井や壁に吸音材を貼り付けること
吸音材には、壁に貼るタイプ、隙間に挟み込むタイプ、立てかけておくだけのマットタイプなど、種類や使用方法もいろいろありますよ。
なお、これらのことは一般的な対処法であり、建物の構造や性能によって効果は大きく変わります。
それでも音はなくならない。煩音だからこそ必要な対策とは?
生活していくうえで、不快に感じる音を完全になくすことはできないけれど、減らしたりあまり気にならないようにすることはできます。
それには、ふだんから人間関係を築いていくことが大事。
良好な近所付き合いがあれば感情移入ができ、多少の物音は気にならなくなるものです。
- 挨拶をする。マンションや地域の集まりにはできるだけ参加して、顔見知りになる
- 小さい子どもがいて周囲に気がかりな場合、顔をあわせたときに、「いつも子どもがうるさくてごめんなさい。気になったら言ってくださいね」などと言っておく。子どもにも挨拶させ、顔と名前をわからせる
- 夜間や早朝は大きな音を出さない。洗濯、掃除機の使用や入浴など、時間帯を配慮
- ドタバタ足音を立てたり、乱暴なドアの開閉をさける
共同生活である以上、「お互い様」の気持ちが大切。
まわりの人をおもいやり、気を配ることで、受け取る側の気持ちは変わりますよ。
まとめ
マンションなどでのトラブル原因となる「生活音」について、音の正体と対処法についてお話しました。
自分が騒音の発生源にならないために
- 音を小さくする工夫
- 音をもらさない工夫
- 音の小さい機器や設置のしかたを工夫
- 時間帯に配慮する
- ふだんからの良好な人間関係
5つの気配りで、被害者にもなるし加害者にもなる「生活騒音」とつきあっていきましょうね!
「部屋探し」の記事でも、生活音について書いています。合わせてお読みくださいね。